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+開発
ローマに本社を置くオート・メラーラ社(2016年にレオナルド社に吸収合併された)は、第1次世界大戦時から各種火砲の開発・生産を行っている老舗の火砲メーカーであるが、同社が1950年代末に開発に着手した艦艇用の76.2mm速射砲シリーズ(MMIアラーガト、コンパクト砲、スーパー・ラピッド砲)は、世界で50種類以上の艦艇に合計1,000基以上が採用されるベストセラーとなっている。
オート・メラーラ社は76.2mm速射砲シリーズのさらなる販路拡大を求め、1983年にこれをベースにした戦場防空用の対空自走砲システムを、「オートマティック」の呼称で自己資金で開発することを計画した。
ちなみに「オートマティック」(Otomatic)という呼称は、「OTO Main Anti-aircraft Tank for Intercept
and Combat」(オート社製の迎撃戦闘用対空戦車)の略称と、「全自動」を意味する英単語「Automatic」を掛けているらしい。
オートマティック対空自走砲は、全天候レーダーと対空・対地両用の76.2mm速射砲を装備する大型の鋼製砲塔を、発電用APU(補助動力装置)を搭載するMBT(主力戦車)の車体と組み合わせたものである。
試作第1号車は1987年に完成し、同年にフランスで開催されたパリ航空ショーにおいて一般に公開された。
この車両は、オート・メラーラ社が自己資金で開発したパルマリア155mm自走榴弾砲の車体に、オートマティックの砲塔システムを搭載したものであった。
続いて翌88年に試作第2号車が完成し、同年にイギリスで開催されたファーンボロー航空ショーに出品されてデモンストレイションが行われた。
同年9月には試作第1号車に捜索レーダーが装備されて、地上攻撃ヘリコプターを使用した追跡試験が行われた。
さらに1989年には、サウジアラビアで試験が行われている。
その後1991年には、ドイツ製のレオパルト1戦車(イタリア陸軍が保有していた車両)をベース車体とする、新たな試作車が完成している。
この車体は、オートマティックの砲塔システムの搭載にあたって走行装置や車体の各部が改造されており、操縦手席の左隣に車内エレクトロニクスの電源を賄うためのAPUが搭載された他、トーションバーを始めとする足周りも重量の増加に対応して強化されていた。
当時イタリア陸軍は、保有するレオパルト1戦車の車体と組み合わせる対空砲塔システムを欲しており、この事情を知っていたオート・メラーラ社はオートマティックの砲塔システムを開発するにあたって、最初からレオパルト1戦車の砲塔リング径に合うように設計していた。
イタリア陸軍は、レオパルト1戦車ベースの対空自走砲を60〜80両調達することを計画しており、その候補の1つとしてオートマティックの評価試験を行う運びとなった。
この試験では地上攻撃ヘリコプターだけでなく、F-104戦闘機やトーネード戦闘攻撃機に対する追跡試験も行われたという。
しかし当時、ヘリコプターや航空機の搭載する対戦車ミサイルは射程が飛躍的に向上しており、対空自走砲ではアウトレンジされてしまう危険が高く、より長い射程を有する対空ミサイル車両の需要の方が高まっていた。
また当時、オート・メラーラ社がイタリア陸軍の要求で開発したSIDAM 25対空自走砲(アメリカ製のM113装甲兵員輸送車の車体と、スイスのエリコン社製の4連装25mm対空機関砲を組み合わせたもの)の部隊配備がすでに進められており、新型対空自走砲をこれ以上導入する必要性は薄いと軍首脳部は判断した。
このため結局、オートマティック対空自走砲はイタリア陸軍に採用されなかった。
その後1997年にローマ近郊で、イタリア陸軍を含む複数の軍事組織にオートマティック対空自走砲が再び公開されたが、いずれの軍隊からも興味を持たれなかった。
そこでオート・メラーラ社は、オートマティック対空自走砲のコンセプトを、より軽量で各種装輪式車両でも運用できる「AMRAD」(Artillery
Multi-Role Area Defense:多目的領域防衛火砲)として復活を試み、砲塔の装甲を薄くした上で捜索レーダーを撤去し、光学照準装置と追跡レーダーのみを装備した。
それでもAMRAD対空自走砲を採用する軍隊は現れなかったが、AMRAD対空自走砲にさらに改良を加えた「ドラコ」(Draco:ラテン語で竜を意味する)対空自走砲は、SIDAM
25対空自走砲の後継として2012年にイタリア陸軍での採用が決定し、B1チェンタウロ戦闘偵察車の車体と組み合わせ、「チェンタウロ・ドラコ」として配備される予定である。
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+構造
前述のように、オートマティック対空自走砲は専用車体を用いた通常の対空自走砲と異なり、対空自走砲の武装システムを砲塔内に全て詰め込んで完結させており、様々なMBTの車体と組み合わせて柔軟に運用できるように設計されている。
砲塔リング径はレオパルト1戦車に合わせて設計されているが、40t級以上のMBT車体であれば砲塔リング径が合わなくても、アメリカ製のM1エイブラムズ戦車やロシア製のT-72戦車などにも幅広く搭載が可能である。
オートマティック対空自走砲の砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、全周旋回が可能であり重量は15tである。
砲塔内部に長砲身の76.2mm速射砲の砲架と弾薬ラック、その直後に2名分の操作用コンソールと射撃統制用電子装置、装填手を収容するために砲塔は必然的に大柄で背の高いものとなり、さらに砲塔上面には目標追跡用レーダー、車長用旋回式光学サイト、それらの後方には伸縮式の全天候捜索レーダーが装備されることから、車両の全高は異例の高さになっている。
砲塔および砲の駆動は電気油圧式で、主砲の俯仰角は−5〜+60度である。
砲塔内には車長、砲手、装填手の3名が搭乗する。
主砲は、艦載砲のベストセラーであるオート・メラーラ社製の76.2mmスーパー・ラピッド砲を車載化したもので、水平・垂直共に安定化されている。
この砲は62口径長と長砲身で、垂直鎖栓式閉鎖機と自動装填装置を持つ。
最大発射速度は120発/分と非常に速いが、通常は3〜5発のバースト射撃が行われる。
最大射程は16kmにもなるが、動きの速い航空機を目標とした場合の有効射程は6kmまでとなる。
弾薬は対空用の近接信管付破片効果弾、近接信管付多目的弾、地上の装甲目標用のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が使用される。
このAPFSDSは射距離2,000mで150mm厚の均質圧延装甲板(傾斜角30度)を貫徹することが可能で、軽装甲目標に対しては充分な威力を持っている。
破片効果弾を使用した場合の砲口初速は、910m/秒となっている。
主砲弾薬の搭載数は90発で内64発を砲塔内に、残り26発を車体内に収容する。
砲塔内の64発の内29発は、即用弾として主砲の装填機構内に保持される。
砲塔内の64発の内9発、装填機構内の29発の内3発は、地上目標用のAPFSDSが搭載される。
システムの中核となるFCS(射撃統制装置)は低光量TV、追跡用TV、レーザー測遠機、射撃統制用コンピューター、レーダーを中心とする対空用全天候捜索・追跡システムから成り、この内の捜索レーダーにはヘリコプターの識別能力がある。
捜索・追跡用いずれのレーダーも最大探知距離は14〜15kmになり、少なくとも8個の空中目標を同時に追跡することが可能だとされている。
高度にコンピューター化されたオートマティックのFCSにはこうした探知・識別能力以外にも、敵味方識別、脅威分析、命中点予測、主砲の自動制御といった数多くの機能があり、それらに関するデータ情報は全て車長・砲手に自動的に表示される。
さらに、このシステムでは目標情報の車両間授受も可能になっており、特定の車両のみがレーダーを使用して得た情報を他の車両にリアルタイムで伝送し、情報を得た車両がレーダーを一切使用せずに目標と交戦することもできる。
副武装は、自衛用に7.62mm機関銃を1挺装備している他、砲塔の左右側面前方に4連装の76mm発煙弾発射機を1基ずつ設置している。
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<オートマティック対空自走砲 レオパルト1戦車ベース>
全長: 9.81m
車体長: 7.08m
全幅: 3.25m
全高: 4.795m
全備重量: 47.0t
乗員: 4名
エンジン: MTU MB838CaM-500 4ストロークV型10気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 830hp/2,200rpm
最大速度: 60km/h
航続距離: 500km
武装: 62口径76.2mm速射砲×1 (90発)
7.62mm機関銃×1
装甲厚:
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<参考文献>
・「パンツァー2002年9月号 戦車車体改造の対空自走砲」 アルゴノート社
・「パンツァー2015年11月号 姿を消した対空車輌たち」 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート51 スカイスイーパー 対空自走砲」 奈良原裕也/吉村誠 共著 アルゴノート社
・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版
・「本当にあった! 特殊兵器大図鑑」 横山雅司 著 彩図社
・「世界の戦車パーフェクトBOOK 決定版」 コスミック出版
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」 成美堂出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社
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